在庫管理の自動化にAIを!IoTとの違いやツールの活用事例も紹介

在庫管理は、製造業の経営戦略において欠かせない要素のひとつです。効果的な在庫管理を実施することで、在庫の過不足を防ぐことはもちろん、業務効率化や生産性の向上、管理コストの削減などキャッシュフローの改善等を実現します。

本記事では、在庫管理自動化のメリットや使用される技術、自動化の事例について詳しく解説します。
 

在庫管理を自動化するメリット

まずは在庫管理を自動化する3つのメリットについて解説します。
 

人為的なミスによる悪影響を無くす

手作業による在庫管理は、数え間違いや入力間違いなどといった人為的なミスが起こりがちです。在庫管理の自動化によって、誤入力や確認漏れといったヒューマンエラーを防ぐだけでなく、業務効率化や人的コスト削減といった効果も期待できます。
 

情報をリアルタイムで把握できる

製品の入出庫状況をリアルタイムにデータベースに反映しておけば、在庫数や在庫の入出荷動向を即座に確認することができます。製品在庫が不足する前に、製品の発注や生産を行ったり、需要の変動に即座に対応したりすることが可能になります。
 

データ解析が簡単にできる

在庫情報をデータ化することによって、過去のデータをもとに需要予測やトレンド分析といったデータ解析が簡単にできるようになります。予測に沿って適切な在庫数を維持することができ、コスト削減や生産性の向上を実現できるでしょう。複雑な在庫管理業務の属人化を防ぐことにもつながります。
 

在庫管理を自動化するための代表的なツール

在庫管理を自動化するためにはどのようなツールがあるのでしょうか。ここでは代表的なものを7つ紹介します。
 

Excel

Excelは、Microsoft社が提供する表計算ソフトウェアです。関数やマクロ、ピボットテーブルなどの機能を活用することで、在庫データの集計や分析を効率的に行うことができます。業務フローに合わせて改善しやすく、低コストで導入できる点がメリットです。
 

バーコード・QRコード

在庫の入出庫情報を自動的に管理する方法として、バーコードやQRコードを商品棚などに貼り付け、専用のスキャナーやスマートフォンで読み込む方法があります。手入力がなくなるため、人為的ミスの削減や作業効率の向上を実現できます。
 

RFID

RFID(Radio Frequency Identification)は、無線周波数を利用して情報を取り込む技術です。商品やパレットにRFIDタグ(ICチップと小型アンテナで構成)を取り付け、専用の機器で読み込みます。非接触であることに加え、一括で数メートル離れた場所からでも複数のタグを同時に認識できる点が特徴です。タグが直接見えなくても認識できるため、在庫管理では作業効率の向上や数え間違いの防止が可能です。
 

RPA

RPA(Robotic Process Automation)は、定型的な業務を自動化する技術です。たとえば、担当者がExcelなどに入力した棚卸し情報を、RPAが在庫管理システムに入力・更新します。ヒューマンエラーの削減が期待できる点や比較的安価に導入できる点がメリットです。
 

在庫管理カメラ

在庫管理カメラは、画像認識やディープラーニングを活用し、AI技術を搭載したカメラによって、倉庫や店舗の在庫状況を監視・分析するシステムです。目視確認が不要となり、商品の数量や陳列状況、欠品などを自動的に判別できます。
 

在庫管理システム

在庫管理システムは、在庫の入出庫や発注、売上データなどを一元管理できるソフトウェアです。 クラウド型やオンプレミス型に分かれ、バーコードやRFIDなどの他のツールとも連携できます。パッケージからカスタム開発まで様々な選択肢があり、目的に合わせてシステムを選択しやすい点も特徴の1つです。
 

AI(人工知能)

AI(人工知能)を活用する場合は、機械学習やディープラーニングなどの高度なアルゴリズムを用いて、需要予測や在庫最適化を行います。過去の販売データや季節・曜日などの情報をもとに、ニーズやトレンドを予測するといったデータ解析が可能です。データによる精度の高い予測によって、市場の変動にも迅速に対応できます。
 

AIによる在庫管理自動化のメリット(利点)

AIによる在庫管理自動化を行うと、次のようなメリットが期待できます。
 

需要予測の最適化ができる

AIによる在庫管理自動化のメリットとして、まずは需要予測の最適化が可能になる点が挙げられます。過去の販売データやトレンド、イベント情報といったデータを分析し、高精度な需要予測を行うことができます。
 

作業の属人性を排除できる

複雑で経験値が問われる在庫管理業務の属人性を排除することができます。経験や勘に頼らず、需要予測もデータに基づいて行われるため、スタッフの作業や時間的負担が軽減されます。
 

教育の効率化ができる

新しいスタッフへの在庫管理の教育に関しても効率化が可能です。AIが業務プロセスを自動化したりサポートしたりするため、専門的な知識や知見を習得させる必要がありません。教育期間を短縮し、早期に業務を実行できるようになります。
 

AIによる在庫管理自動化のデメリット(注意点・課題)

AIによる在庫管理自動化を行うためには、次のような課題があります。
 

大規模なシステム変更が必要

AI活用に向けて、これまで使用していたシステムや業務プロセスを見直さなければなりません。システムの統合やデータの連携には時間とコストがかかるため、業務への影響も考慮しなければならず、導入前に綿密な計画と社内調整が必要です。
 

データ収集コストがかかる

AIの精度は、収集するデータの量と質によって左右されます。質の高いデータの収集・整理・保管にはコストがかかるでしょう。データ基盤の整備やセキュリティ対策も重要な課題となります。
 

専門人材の採用が不可欠

AIによる在庫管理システムの導入・運用には、専門的な知識を持つ人材が必要です。社内に存在しない場合は、高額の人件費や外注費が発生する場合があることを考慮する必要があります。
 

AIブラックボックス問題

AIを使用する場合、予測や意思決定のプロセスが不透明になるブラックボックス問題が発生するといわれています。AIの意思決定を人間が理解できるように示す Explainable AI(XAI)の導入によって解決できるものの、人材育成やトレーニング、専門家による検証も必要です。
 

AIとIoTの違い

在庫管理の自動化には、AIとIoTという、二つの技術が活用されています。両者は在庫管理において、次のような役割を果たしています。

  • AIは、データの分析や予測に使用される。自動的に学習を繰り返し、在庫管理では需要予測や在庫の最適化などを可能にする。
  • IoTは、モノをセンサーやデバイスによって、インターネットに接続させる技術の総称。在庫管理ではデータの収集や通信に役立ち、倉庫内の在庫数や商品の位置情報の取得が可能。

loTで収集したデータをAIで分析することもでき、より精度の高い在庫予測にも使用できます。
 

AIによる在庫管理自動化の事例

さまざまな業界でAIによる在庫管理自動化が活用されています。ここでは事例を2つ紹介します。
 

事例①アパレル業界での需要予測による在庫最適化

ある企業では、過去のアパレル販売データや季節のトレンド情報をAIで分析し、商品の需要予測を高度化しています。この企業では、AI導入前は担当者の経験や勘に頼っており、在庫の過不足が発生しやすい状況でした。

しかし、AIによる在庫管理自動化に踏み切ったことで、自動的に商品の売れ行きを予測し、適切な在庫量を自動で算出できるようになりました。結果として、過剰在庫や欠品を防ぐことに成功しています。

また、ニーズに合わせた商品展開が可能となり、売上の向上にも貢献しています。
 

事例②食品メーカーの賞味期限管理と廃棄ロス削減

ある食品メーカーでは、AIとIoTを組み合わせて在庫管理を自動化し、賞味期限の管理や廃棄ロスの削減に成功しています。在庫管理システムの導入前は、手作業による賞味期限チェックで時間と労力がかかり、ヒューマンエラーによる管理ミスが頻繁に発生しており、廃棄ロスも増加していました。

AIによる在庫管理自動化によって、IoTセンサーで商品在庫の賞味期限をモニタリングし、AIが最適な出荷順を提案できるようになりました。また、市場データや天候情報を分析し、需要を予測することで、生産と在庫量を自動で調整することも可能となっています。

結果として、在庫回転率の向上と廃棄ロスの削減に成功しています。
 

まとめ

AIによる在庫管理の自動化は、人為的ミスの削減やリアルタイムでの情報共有、データ解析が簡単にできるといったメリットがあります。また、RFIDやRPAなどを併用して活用することで、需要予測の最適化や属人的な業務の負担軽減が可能です。

ただし、大規模なシステム変更やAI人材の確保が必須となります。適切なツールと技術を選択し、在庫管理の自動化を進め、業務効率の向上とコスト削減を実現することが重要です。

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監修者情報

小野塚 征志

経歴:
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。
ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョンや経営計画の作成、新規事業の開発、DX戦略やアライアンス戦略の策定、構造改革の推進、リスクマネジメントの強化などの多様なコンサルティングを展開。
経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員などを歴任。
近著に、『ロジスティクスがわかる』(日経文庫ビジュアル版)、『ロジスティクス4.0』(日経文庫)、『サプライウェブ』(日経BP)、『DXビジネスモデル』(インプレス)など。


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